5.サクラ

桜の美学が判るのは日本人の証と申します。
桜の花の美しさもまたさることながら、淡い色合いだけを残して直ぐに散ってしまうのもまた、桜ならではの魅力でしょう。
破滅の美学なのです。
儚く散るのは桜だけではないでしょう。
それなのに何故か桜ばかりがもてはやされるのです。
古来日本人は桜よりも梅を愛し、重んじてきました。
梅は春を告げる花だったのです。
甘い香り、美しい花。
しかしいつしか、春を告げるのは桜と鶯に変わってしまいました。
何故でしょう。

そんな話はさておき。
日本人の桜好きは尋常ではありません。
並み居るアーティストは桜を題材に歌を歌います。
文筆家たちの著作にも桜は多く見られます。
画家もこぞって桜を描き、写真家もこぞってフィルムに収めます。
桜を題材とした食べ物も多く、その色もまた愛されます。
ゲームやマンガでも「さくら」という名前を持つキャラクターが活躍しています。

馴染み深い花。
愛されている花。

桜。

桜花礼賛。

桜を純粋に見つめる目が失われていないか不安です。
桜を思うときに、桜そのものを思い起こしているか気がかりです。

桜。
思ったその姿。

何かのフィルタで歪んだ姿ではありませんか?
その桜、本当に貴方の知っている桜でしょうか?

思いは尽きません。
私もまた、桜の怪しさに捕り憑かれたうちの一人……。

20070227 Takami Simon

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