10.生まれる前

生まれる前のことなんて何一つ覚えていません。
生まれた後のことさえ殆ど覚えていません。

でも、それらの自分が存在していたからこそ
いま自分が存在していると言うことはわかります。

生まれた時にこの体を構成していた細胞。
入れ替わってしまっているのでしょう。
脳細胞は再生しないともいいますが
そうしたら私の体の中で唯一生まれる前を知っている部分?

髪・皮膚・爪……

同じ細胞など一つもないというのに
あの時の私と今の私が同じ私であるという意識は
一体どこから来ているというのでしょう

その確信は、どこから……?

記憶、でしょうか?

私には数年前、確かにそこに居て何かした記憶があります。
だから、その私は今の私の昔の姿なのです。

では、覚えていないほど前の自分が今の自分であるという自覚の理由は?

根拠を記憶に求めるのだとすれば、その自分を肯定できる要因など一つも存在しないではありませんか。

DNA?
一致している?

はっ。

自分で自覚ももてない自分の証明なんて、生きていく上でなんになると言うのでしょう。

客観的に自分を証明することと主観的に自分を証明することを混同してはいけません。

客観的な証拠でいいのならば
生まれた時から片時も離れずに誰かが真横でVTRをに録画してくれればいいのです。

生まれる前から超音波写真を撮り続けてくれればいいのです。

その行為に意味を感じない人。
主観的な自分の証明を求めるというならば

貴方は何をもって自分を自分であると証明するのでしょうか?

生まれる前の世界。
生まれる前の自分。

そこに貴方は、何を見るのでしょう。

20070303 Takami Simon

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