生まれる前(by:春羽伺剣)
身体は暖かいプールの中にいた。 くぐもって聞こえる音が楽しみだった。 精神は宙を舞っていた。 音を作り出している人を見るのが好きだった。 僕を生む前に、 その人はいなくなってしまった。 プールの中より暖かいであろう、太陽の光。 明瞭に聞こえたであろう、沢山の音。 呪縛の中で様々な経験をしたであろう、感情。 僕を大事にしてくれたであろう、その人。 僕が 在る筈だった世界。
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