片方だけ(by:春羽伺剣)

 

心の天秤に、出来事が乗っていく。
右のお皿はプラスの重さ。
左のお皿はマイナスの重さ。

心の天秤は絶え間なく揺れ続ける。

右か、左か。
左か、右か。
ゆら、ゆら。
ゆら、ゆらり。

かたん。
小さな音がして、天秤は止まった。
傾いたまま止まった。

それ以来、出来事は天秤のお皿に乗らなくなった。
心の天秤は、揺らめくことなく一方を空へ高く掲げている。

お皿に乗り切らなくなった出来事が、天秤から零れ落ちた。

 

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