止まらない(by:春羽伺剣)

 

貴方の温かい腕と
貴方の優しい声を
一瞬にして好きになってしまった。

好きだと気付いた時、
私の心は止まることを忘れてしまった。

貴方の声が
目が
口が
腕が
首が
胸が
腰が
脚が
全部、私の中で
特別なものになっていく。

貴方の息が
言葉が
視線が
体温が
笑顔が
存在が
私の特別なものになっていく。

“貴方”を誰にも触らせたくなくて
“貴方”と離れたくなくて
“貴方”を独り占めしたくて


私の中で特別になった貴方の首を、
私の手が、きつく、きつく、締める。
私の中で特別になった貴方の手が、
私の腕を、きつく、きつく、締める。

私の手を排除しようとする。

側にいたい。
側にいたい。
貴方の側にいたい。
貴方を誰にも渡したくない。

私の心は、止まらない。
私の手も、止まらない。
私には、私を止められない。

貴方の手から力が抜けた。
私の手からも力が抜けた。

ようやく、止まった。

 

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