冬のある日(by:春羽伺剣)

 

暖かい窓辺。

日向で眠る白い猫。

幸せそう。

 

窓から、黒い三角形の耳が二つ。

幸せそうに眠る白い猫を

ただただ、羨ましそうに見つめる。

 

視線に気付いた白い猫。

硝子越しに二匹の視線がぶつかり合う。

 

硝子窓がなければ、ほんの数cmの距離。

硝子窓の内側は暖かく、外側は北風が荒れ狂う。

 

「あったかそうだね」

黒い猫が声をかける。

「あったかいよ。だけど、僕にはこの世界しかない」

白い猫が答える。

「でも、僕ら野良猫はいつも死と隣り合わせさ」

黒い猫は寂しそうに首を振った。

 

自分のいる場所。

悪いところしか見えなくて、それを不運と嘆く。

他人のいる場所。

良いところばかりが見えて、それを幸運と妬む。

 

誰にでも長所はあるのに自分では気付かない…。

そんなお話。

 

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