ミチシルベ(by:春羽伺剣)

 

コンクリートの道が
視界に留まっている。
あの人の顔も見れずに
視界を下方で彷徨わせ
私は黙って立っていた。

「顔を上げて
 視線を空に向けて
 ミチシルベは
 目の高さよりも
 上にあるんだから。」

顔を上げたら
眩しい日の光と
あの人の笑顔が
私の視界に
飛び込んできた。

「笑って。
 ほら、
 その方が
 明るくていいよ。
 上向いて。」

私は
恥ずかしくなって
口元を
両手で隠して
笑った。

「ね?
 前向きになれたでしょ?
 空
 見上げるだけでも
 気分は変わるよ。」

言われて
空を仰いで
気付いた。
曇っていたけど
空は明るかった。

「何の
 ミチシルベも
 上にあるんだから
 下を向いてちゃ
 駄目だよ。」

優しい声に
視界が揺れた。
涙を堪えて
上を向いたまま
笑った。

 

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