魔法鏡(by:春羽伺剣)

 

いつものように、あなたの後ろ姿を見つめていた。
机3つ分の距離。
あなたは前しか見てないから、私に気付かない。
携帯で誰かにメールを送ったり。
鬱陶しそうに前髪を払い除けたり。
そんななんでもない動作の一つ一つが何故か私を惹きつけた。
まくった袖から伸びる腕がペンを並べ教科書を開いた。
肩を軽く動かして・・・私からは滅多に見えない左手が覗いた。

薬指に光っていた銀のリング。

あなたが私に気付かないのは、いつも私があなたの後ろにいるからだけではなかった。
どんなに想っていても、届かない理由があった。
机3つ分の距離。
いつもと同じ席から、あなたの背中を眺めた。
あなたの遠い背中はいつものように、真っ直ぐ前を向いていた。

 

戻る





(C)Copyright, All Rights Reserved, Ishindenshin, 2003-